「今も引き継がれる江戸前寿司の名残、それがこはだ」
安価で美味しい光物といえば、このこはだです。
寿司ネタとしてはあまり目立つ方ではありませんが、江戸前寿司ネタだったり、出世魚だったりと実は奥が深い魚です。
今回は旬間近ということでこはだについて書いていきたいと思います。
「出世魚」
こはだはぶりなどと同様に成長によって呼び名が変わる出世魚です。
4-5cmまで→シンコ
7-10cmまで→コハダ
12-13cmまで→ナカズミ
15cm以上の成魚→コノシロ
と呼ばれています。
これは関東圏で呼ばれることが多いため、各地方で呼び名が変わることがあります。
「江戸前寿司の代名詞?」
さて、サイズによって呼び名が変わることはわかって頂いたと思いますが、江戸前寿司でこはだだけが好まれる理由はなんでしょうか?
通常成魚であるコノシロは寿司で使われることはありません。
こはだは酢締め(酢と塩に漬ける)で食べるのが一般的ですが、コノシロでは塩や酢が染み込み過ぎたり、染み込まなかったりと職人の仕事がしっかりとできないために好まれません。
逆にこはだは最も安定した作業ができるため好まれています。
余談ですが、江戸前寿司と呼ばれるものは江戸時代で生まれた寿司のことです。
当時は冷蔵庫などはありませんでしたので、今のような生魚メインではなく焼き物や煮物、酢締めなどで腐らないようにしていたものが一般的です。
中でもこはだは小さい魚のため、裁くのが難しく職人の腕が試されるネタです。
塩を振り酢に漬け込みますが、この一手間が良い職人なのか?美味しい寿司屋なのか?を判断するポイントとして言われる所以(ゆえん)です。
今の江戸前寿司というと美味しい寿司屋という看板として使われることが多いですが、これを見て気になった方は江戸前ネタであるこはだや煮あなご、漬けまぐろ、とりがいなどを食べてみてはいかがでしょうか?
きっと日本の寿司の歴史を感じられるはずです。
■名前の由来
古来から大漁に獲れたため「飯の代わりにする魚」から「飯代魚(コノシロ)」となったと言われている。
こはだは諸説ありますが、子供のような肌に由来し「子肌(こはだ)」。
漢字では「小肌」「小鰭」と書かれる
■主な産地
仙台湾以南の全国で獲れる。
浜名湖、伊勢湾、長崎などが有名な産地。
■生態
・地方によって旬は様々ですが、こはだというと旬は夏。
・大きな回遊はせず、定着性の強い魚。内湾などに群れで行動する。
・餌はプランクトン。水ごと吸い込みプランクトンのみを食べる。
・産卵期は春。寿命は3年ほど。
■食べ方
酢締めにして食べるのが一番旨い。
江戸時代では「この城(コノシロ)を焼く」という意味で焼いて食べることは敬遠されたが、今は塩焼き等で食べる地域もある。